「9.立地について」を書いてから、かなりの時間が経ちました。実を言うと、あのコラムを書いた頃に、店舗を移転する話しが進行しつつあったのです。ただ、水車通りの店舗は木造ながら２階建ての店舗だった関係で、１８年余りの間に書類などが増えてしまい、それをどうするかでだいぶ迷っていました。

ただ、年々集客が難しくなってきていたので、それを打開するには、立地しかないかという結論は一応出ていました。けれども、人間というものは、環境に安住する生き物のようで、住環境を変えることを嫌います。

住めば都と言うとおり、東京都の遷都問題がいまだに解決しないように、移転先の店舗契約が終了しても、１１月ギリギリまでぐずぐず。さて、鷹の台で不動産業を開業する前に、青梅線の東中神駅前で不動産売買の仲介業の会社の雇われ社長をしていました。

当初は、私自身では雇われているとは考えていなかったのですが、社員がスポンサーの麻雀友達で、チラシ広告を印刷する会社の社長もスポンサーのお友達。後でわかったのですが私の言動は一切合財、スポンサーに筒抜け、言ってみれば、隠しマイクだらけの環境の裸の王様だったわけです。

その店舗は駅のロータリーの中にあり、駅の改札から３０秒ほどの立地だったのですが、いかんせん２階の店舗でした。人間というものは70%は水分で出来ていますから、地上から２階に上げるにはものすごいエネルギーが必要になります。

その店舗を借りる前に、昭島のロータリーの中に１階の店舗があり、それを借りにいったのですが、スポンサーの会社の名前が○○興業というネーミングだったために、その筋の会社と誤解されたらしく貸していただけませんでした。

今考えてみれば、私にとってはそれが幸いしたと思っています。その店舗はその後コンビニになったようで、その後どうなったかわかりませんが、立地が１階店舗ですから、多分、会社的には利益の上がったと思います。

つまり、深みにはまって抜け出せなかったかもしれません。そんなわけで、２階の店舗は最初から赤字が続きました。億までは行かなかったと思いますが、それに近い欠損か゜出たと思います。その事が、現在の私にとってはプラスになっています。

何しろ、現在もそうですが、東中神の会社を開業するに当たって、マーケティングリサーチをしたわけでもなく、全くの行き当たりバッタリでした。元々、私自身、自分で不動産会社を経営しようなどと考えていませんでしたし、お金の心配がないのならと引き受けたようなものです。

しかし、色々と意見が合わなくなり、あることがきっかけで、私自身がスッカリ嫌気がさして、やめる事にしました。しかし、高い給料が足かせになり、自前の会社をやるしかなくなって、天界大明神などという怪しげな生き神様に相談し、鷹の台で開業したというわけです。

その時は、鷹の台が不動産業にとってどんなマーケットであるかなどは、全く考えてもみませんでした。今では笑い話なのですが、武蔵野美術大学や白梅短期大学、津田塾大学等がある学生の街だという認識もなかったのです。

一言で言えば、運がよかったというしかありません。開業当時はそれまでの蓄積で、同業者からの紹介や、それまでに契約したお客様からの紹介があったりし、まずまずの営業成績を上げることが出来ました。

宅建業の免許がおりたのが平成３年の４月２０日だったので、賃貸の時期ははずしてしまいましたが、まだまだ不動産バブルの余韻がくすぶってい、案外簡単に売買仲介が成立しました。勿論、私自身もまだ５０代半ばで、社員である長女も長男も、２０代になったばかりで、エネルギーに溢れていました。

しかし、資金が潤沢にあって開業したわけではなく、全く、見切り発車みたいな状況でした。そんなこんなで、泣かず飛ばずで、１８年余りを過ごしてしまいましたが、色んな偶然が重なり、ついに、鷹の台駅では、一番良い場所に移転する事が出来ました。

私の予想は、駅前の店舗だから、最低１日に一人のお客様は入るだろうというものでした。確かに１月から３月までは、予想通りのお客様が来店されました。しかし、４月にはいると、ガクッと来店するお客様が減少しました。

鷹の台は学生の街ですから、日曜日、駅前の商店は８割がた休みになってしまいます。さすがに不動産業者で休む会社はありませんが、日曜日だからといって賃貸アパートや売買不動産を探しに来るお客様はあまりありません。

何よりも、いわゆる不動産を探すにあたっての入り口が、新聞折込チラシから、ホームページになってしまったことがあります。駅前店舗だからといって、従来どおりの小さい蜘蛛の巣営業は成り立たなくなり、ホームページという巨大な蜘蛛の巣をいかに上手に構築するかが、まずは初歩の段階だとかんがえているところであります。