不動産コラム 1.「仲介手数料0の裏側

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 本来、不動産の購入は、、ワクワクするほど楽しいものなのです。しかし、不動産を購入するためには、殆んどの場合、不動産会社を仲介人として購入する事になります。時と場合によりますが、その時から、ワクワクがストレスに変わることになります。

それを回避するには、まず、最低、次のような、条件を、ご自分で選ぶ必要があります。

1.信頼できる不動産会社を見つけること。
2.自分と気が合う、信頼できる営業社員と出会うこと。
3.自分の考え方と、現状をよく理解してくれる営業社員に出会うこと。

まずは、以上の3つの条件が揃えば、あなたは、楽しく、ワクワクしながら、不動産探しの旅に出る事が出来ます。

ここで、私の経験を少しお話しします。昭和63年、不動産バブルが始まった年に、私は郷里の山形県鶴岡市大山というところに、母親の住む家を建てました。

土地は約100坪、建物は1階が8畳の和室2室と、6畳の和室に、8帖の台所。2階は6畳の和室と7.5帖の洋室と3帖のクローゼット。道路は南6メートルの公道。総額で2000万円、ローンは1600万円でした。弟が地元の材木店で働いていた関係で,建物はその材木店出入りの大工さんに頼みました。

出来上がるまでは一度も見に行きませんでしたが、弟が建物が出来上がっていく様子を、写真にとっては、送ってくれました。私は、会社から帰ると、毎日毎日、その写真をあきもせず見ていました。それほど、自分が買った家というものは、想像以上に愛着がわくものなのです。

だから、これから、ご自分の家を買おうと考えている人は、楽しく、家探しをすべきなのです。しかし、一度、不動産会社と接触した人は、自分の理想と、現実のギャップに突き当たっていきます。一口に不動産といっても、土地、一戸建て、マンション、店舗、投資用の不動産と色々あります。

そして、ほとんどの場合、ご自分が気にいった不動産と出会うためには、売主と買主の間に何らかの形で不動産会社が介入します。不動産は高額な商品ですから、八百屋でカボチャ胡瓜を買うようなわけにはいきません。それは、トラブルに巻き込まれないためにも、後で、しまったと後悔しないためにも、必要な事なのです。

だから、最初に申し上げたように、最低でも、1.2.3の条件が必要なのです。ならば、どうしたら、1.2.3の条件を満たす不動産会社や営業社員と出会う事ができるのか、最近では、ほとんどの不動産会社がホームページを開設していますから、折り込みチラシに書いてある、その会社のホームページアドレスにつないでみてください。

インターネットに接続できる環境をお持ちでない方は、勇気を持って不動産会社を何件か回るしかありません。そして、名前と電話番号を明かさずに、その会社の雰囲気や、応対してくれた社員の立ち居振る舞いを、観察する事です。そして、ご自分のフィーリングに合わなければ、さっさと退散しましょう。

それは、不動産の物件は、どこの不動産会社でも、ほぼ同じものを扱っているからです。何も、好き好んで、自分がいやだと感じた会社で買う必要はないのです。さて、弊社も含めて、不動産会社も商売ですから、利益を上げなければつぶれてしまいます。だから、チラシやインターネットを使って、買いたい人や、売りたい人を探そうとします。

いったい、チラシを1回、新聞に折り込むとどのぐらいの費用がかかるかをしっていますか?B4サイズのチラシ1枚の新聞折込代が、消費税込みで3円46銭。弊社では自社印刷機でチラシを印刷しますから、インク代と紙代等で1枚1円50銭。つまり、新聞に折り込むには、チラシ一枚につき約5円の費用がかかります。

印刷スピードは最速で1分間で120枚ですから、12000枚印刷すると100分、約1時間40分かかります。ただし、一回につき1000枚ずつしか印刷機にセットできないので、余分なロスタイムを入れると、12000枚で2時間はかかります。裏面も印刷すると合計4時間。結構ハードな作業になります。

では、チラシの反応はどうなのでしょうか。最近では、不動産チラシの反応が悪くなり、1万枚に電話が1本かかってくればいいほうだといわれています。私が不動産の仲介会社で働いていた頃も、現在でも、一人の営業社員が1本の契約をする為には、10人の見込み客が必要なのです。そして、契約率1割で一人前といわれるようになります。

だからといって、新聞折込チラシ10万枚で10人のお客様を集められる保証は全くありません。よほど、ご機嫌のいいお客様か、何らかの事情で短期間に不動産を買わなければいけないお客様以外は、電話番号も、住所も、言いません。毎週、木曜日から日曜日にかけて、大量の不動産チラシが新聞に折り込まれます。

金曜日は新築マンションの大きい、カラーの分厚い紙質のチラシが入ります。私の想像ですが、1回につき約1000万円はかかると思います。したがって、新聞にチラシを折り込んだ不動産会社は、電話をかけてきたお客様の住所と電話番号を聞き出すために、秘術を尽くします。

弊社では、その機能をつけていませんが、最近の電話には、電話をかけてきた相手の電話番号をキャッチする装置がついています。片や、電話をかけるほうは、184と電話ボタンを押してから問い合わせ先の電話番号を押します。184《いやよ》で、自分の電話番号は相手にわかりません。

また、インターネットの普及と回線料金の値下げ、通信量の大量化と伝達速度のスピード化によって、安価に、速く、手軽に利用できる環境が整備され、24時間つなぎっぱなしでも、たいした料金になりません。インターネット普及以前は、不動産の物件情報を知る主な手段として、新聞折込チラシが主な手段でした。

また、チラシだけでは、その不動産会社が、どんな会社かを知る手段がありませんでした。しかし、新聞折込チラシを入れる不動産会社はほとんど、ホームページを持っています。したがって、電話をかける前に、その会社のホームページを好きな時間に、時間をかけてのぞいてみればいいのです。

たいがいの会社のホームページは、弊社も含めて、単なる物件の羅列です。そして、市役所や、小学校や、国税庁などのホームページにリンクを貼っています。誰が不動産会社のホームページを経由して国税庁のホームページにアクセスするのでしょうか。とにかく、自分の会社のホームページは24時間覗かれているわけです。

しかし、ほとんどの会社はこのことに気が付いていません。街の商店の人は未だにホームページさえ開設していません、その利用価値さえ解っていないのが現状です。大店舗法の改正や規制の緩和で、巨大な複合店舗が出来、資力に任せて、底引き網のように、大量のお客様を自分の施設にさらっていきます。

街の中には、大資本の展開するコンビニエンスストアが点在し、地元商店の顧客を集めてしまいます。地元のお蕎麦屋さんやパン屋さんの商売敵がコンビニのざる蕎麦だったり、アンパンだったりするわけです。不動産会社の場合も同じです、何かの大群のように店舗展開するアパマンショップやエイブルやミニミニ。センチュリー21やリハウス。

そして、大手の不動産会社と地元の中小不動産会社とではやり方が異なります。以前から、【専任を制する者が、市場を制する】といわれています。要するに、売りたい人を探して、売り物件の依頼を受けることです。大手のやり方は、配布チラシや、新聞チラシで無料査定とか、ファックス査定、ネットでの査定という名目で、売り物件を集めるのが主力戦法。

中小も【求む物件】などとチラシを入れますが、問い合わせは、まず皆無です。日本には、昔から「寄らば大樹の陰」とか「長いものには巻かれろ」という諺があるように、大きいものを信頼する国民性があります。まして、不動産会社は顧客選択権のない職業の一つなのです。これは、八百屋さんや、魚屋さん、ガソリンスタンド、お米屋さんと同じように自分でお客様を選べないという事なのです。

そこで、人間というものは、一番安易な方法を選択します。価格競争です。賃貸市場においては、既に価格競争が始まっています。しかし、効果はあまりないようです。不動産仲介会社でも仲介手数料0で新聞折込チラシを入れる会社が出てきました。インターネットではヤフーやグーグルで≪仲介手数料0≫で検索をかけると125000件ぐらいの検索結果が出ます。

商人には奇策はありません。価格競争をすれば大資本に必ず負けてしまいます。不動産会社は大きくは金融業のカテゴリー(範疇)に分類され、また、サービス業でもあります。金融業の商品の一つは金利です。不動産仲介業の商品はサービスであり仲介手数料は、その対価の筈です

それにもかかわらず、自らの得るべき対価を放棄し、仲介手数料0を謳うことは、サービスの放棄でもあります。仲介手数料を価格であるとすれば、0価格という価格競争をする事になります。さすがに、中古住宅や中古マンションなどの仲介手数料0はありません。

新築一戸建てと、業者買取り、リフォーム後に再販する、中古住宅や、中古マンションは、売主側から手数料が出ますから仲介手数料を0に出来ます。しかし、買主から手数料を頂かないことは、おのずから、その会社は買主側の味方ではないという事になります。

仲介会社というものは、自分の仲介サービスで正当な対価を請求すべきであり、もし、自分のお客様が、その「サービスに不満だったら、仲介手数料はお返しします」ぐらいの気概を持つべきなのです。

仲介手数料0で新築の一戸建てを購入しようとした場合、大幅な価格交渉は、まず期待できません。なぜなら、売主側からでる手数料が限りなく0に近づくからです。弊社のこれまでの取引や、私自身の27年余りの不動産取引経験でも、最初から仲介手数料を値切った人に長い付き合いになった人はいません。

そして、そのような人は、思い出せないほど少数であり、今考えても、そういうお客様は最初から取引をお断りすればよかったと、今にして思います。賃貸の場合は、完全に借り手市場になったため、仲介手数料を借主からいただかない業者が多くなってきました。礼金0、敷金0、仲介手数料0も最近では良く見かけます。

それでは、手数料はどこから出るのかといえば、貸主が出す場合がほとんどなのです。だからといって、賃貸仲介会社は借主の味方であり、貸主の味方でないほうが多いのです。それは、市場の意志であり、それに気が付かない貸主は長期の空室を抱えることになります。

弊社が所属する宅地建物取引業組合にも、購入に関する仲介手数料0をホームページでの「キャッチ」にしている会社があります。取り扱い範囲は、北多摩地区全域と埼玉県の奥地までの広域です。一度、その会社の社長に話しを聞きにいった事があります。が、「女性のお客様が多いということと、それでも、売主と直接取引をするお客様がある」ということでした。

結論として、そういうやり方は、やるべきではないというのが、私の感想でした。不動産市場の流通物件は、東日本不動産流通機構【通称:東日本レインズ】への登録が義務付けられています。そして、レインズの情報は一般消費者には公開されていません。

しかし、技術的には閲覧させることは可能なようです。ただ、それをした場合には首都圏不動産公正取引協議会によって規約違反に問われることになるかもしれません。ただし、自分の会社に会員登録をしたお客様に取得した情報をお送りする事は出来ます。

弊社では、国分寺市、小平市、東大和市の土地、一戸建て、中古マンションの全情報を毎日取得し、案内図付の図面に加工してファイリングしています。そして、不動産情報誌にまとめ、月に一度、登録しているお客様に送付しています。





詳しくは、売買不動産情報誌「マイホーム応援団」のページをご覧下さい。

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