不動産コラム2. 不動産仲介会社の1週間

 | 朝日クリエイトのTOPへ |  コラム目次 | 

≪佐藤君、もうやめたら≫と、その日も部長が私に言い放ちました。上司といっても、部長は私よりズッーと年下です。入社して2ヶ月目が過ぎようとしていましたが、不動産経験皆無の私は何も言えません。が、心の中では(なんだ、このやろう)とは思っていました。

その会社に入社したのがその年の9月下旬。10月の宅地建物取引主任試験には、会社に出社せず、赤い長袖のポロシャツを着て出かけました。試験が終わって出社すると≪佐藤君、受験は一旦、会社に出てから行くんだぞ!! 一体、なにを考えてんだぁー≫店長が怒鳴りました。

でも、それまでに、いくつもの職業を経験してきた私は、《すみません》とは言ったものの、そんな事でしょげる年齢はとっくの昔に過ぎていました。配属された課の主任にも≪不動産について能書きを言うのは10年早い≫とか何とか言われたりしても、馬耳東風。

とにかく、態度がでかい、可愛くない新入社員社員だったような気がします。当地で不動産業を開業した当時も、ある不動産会社の社長が≪おたくの社長は頭が良さそうだけど、金儲けはへただねぇー≫と長男に言ったそうです。

しかし、最近では、そんなことは言わなくなりました、じわじわと、私の実力?が分かってきたのかもしれません。さて、前振りが長くなりましたが、今回のテーマである、【不動産仲介会社の1週間】についての開講です。

街の不動産会社も含めて、大概の不動産会社は水曜日が定休日です。火曜日は午後3時まで。これが、一般の不動産仲介会社の1週間のスケジュールです。月曜日、朝礼が終われば、あとは、なにをしようが干渉はゼロ。所属する課員と、下見と称して物件を見に行く者がほとんど。2時間ごとに会社に電話を入れ、映画を観ている場合もあります。

あとは、社内の物件ボックスから、自分が担当するお客様の物件を探す者。業者を訪問したり、お客様のところに訪問に行く者。しかし、実際はなにをしているかは把握不可。一体、なにをしてるかなどと詮索していては、管理職など勤まりません。

どの不動産会社も9時から10時が始業で、6時終業というのが建前ですが、店長が帰宅する前は、終業にはなりません。終業は店長が帰ってから各自が決めればいいことで、5時頃になると外出していた社員が何となく会社に帰ってきます。中には、6時に夕礼をする会社もあると聞いたことがあります。

帰宅する前に、A4用紙を4等分したより少し大き目の日報をつけなければなりません。日報に書く文字はたいてい4文字。「下見、訪問」が大部分。詳しく書いたところで、売上には直接関係もありませんし、上司も根っから信用していません。

火曜日も同じ。水曜日は休み。木曜日頃から少し顔つきが変わります。金曜日から土日に掛けては地獄。それまで優しい顔をしていた店長が怖い顔に変身。≪アンナイをとれ!!≫と、檄を飛ばします。

土日に案内のない社員は、会場に出て、集客します。集客は契約率のいい社員が優先です。私なども、入社して10月、11月と一本も契約できませんでした。月にゼロ契約の社員を「パイパン社員」といいます。

中には、集客しても、集客しても延々と何ヶ月も契約できない社員もいます。パイパン街道驀進社員です。しかし、こんな社員でも、なんかの拍子で、大手の仲介会社に入ると、コンスタントに月2本ぐらいは契約できるようになります。売りの委任が取れるからです。

売却の委任を受け、図面を流通市場に流せば、買主は、他の不動産会社の優秀な営業社員が見つけてくれるからです。売主側の会社を元付け、買主側の会社を客付けといいます。

現在、某大手不動産会社に在籍し、『この地区で、○○というお客様が二世帯住宅を建てるために100坪の土地を探しています。予算は○○万円というキャッチフレーズでチラシを入れまくっている、その大手不動産会社の営業社員が、仮に弊社に入社しても、まず、パイパン街道を走ることになるでしょう。

確かに、その条件で探しているお客様がいることは間違いないかもしれません。そこで、《はい、私が100坪の土地を持っていて、売りたいんですが》といっても、相手様のあることですから、その土地を気にいるとは限りません。

次は、何とかかんとかセールストークを駆使して、とにかく売却の委任契約を結ぶ。手を上げたほうも、《大手だから、査定価格も思ったより高いし、ま、3ヶ月ぐらいは任せてみようか》となります。委任形式は、一般媒介、専任媒介、専属専任媒介の三つ。

売主に有利なのは専任媒介まで。しかし、大抵は専属専任媒介を結ばされてしまいます。期間も3ヶ月。しかし、期間は売主が決めればいいことで、1ヶ月でも、2ヶ月でもいいのであります。とにかく、専属専任媒介契約は結ばないようにすべきです。

そして、彼らは若いのに態度がでかい、それに、売主は売主で、何故か、「鷹の台」の土地を大手の「荻窪支店」などに依頼するのです。不動産というものは所詮「価格が適正」であれば地元の「父ちゃん、母ちゃん」が経営している小さな不動産屋でも売れるのです。

査定は必要なのですが、乱暴な言い方をすれば「査定価格」などでは売れないのです。業者の立場に立てば、売れると思った価格で正直に査定しても、他の業者がそれより高い査定価格を出せば、売るほうは少しでも高く査定してくれた会社に依頼するのが人情というもの。

また、話しが横道にそれました。金曜日までに、担当するお客様の物件を探し、下見をしたうえで、お客様のところに訪問し、家族揃っての案内をとります。しかし、敵もさる者、中には《今週は主人しか都合がつかない》とか《今週は主人はいけないけど私だけ》とかいうケースがあり、これは、必ず結論が先延ばしになります。

案内は、特に土日である必要がありませんが、大部分のお客様は土日が休みですから、土日の案内が多くなります。社員にとっては、一ヶ月に、何回、別々のお客様を案内するかが、契約締結への前提になります。

「案内無くして契約無し」入社すると、まず、この呪文を叩き込まれます。次に、「案内は半日コース、あまり良くない物件、まあまあの物件、最後に、これはという物件を案内します。これを、業界用語で、回し、対抗、本命」といいます。

そして、「現地から会社の上司に連絡し」「案内が終わったら会社に連れ帰る」というのが一通りの案内パターンであります。現在は、携帯電話という便利なものがありますが、当時は、公衆電話を探すのが結構大変でした。探しても、ない!

お客様が、案内した物件さえ気にいれば、どんな遠くの物件を案内しても、説得しなくても、黙って会社までついて来ます。気にいらなければ、《一度、駅から案内してもらった物件まで歩いてみたいから》などといって、車からおりてしまいます。

結局、その日の案内は、契約までに至らないわけで、これを「感度が出ない」といいます。これで、1週間は終了です。そして、月曜日の朝、火曜日の朝、木曜日の朝、金曜日の朝、土曜日の朝、日曜日の朝、仲介会社の朝は前日に契約した社員の契約発表で始まります。

《売主、何々様、買主何々様、○○市新築住宅○○万円ありがとうございました》次に、どのようにして決まり、どのように上司に協力してもらったかを経過説明をします。

たしか、その前に、《おはようございます》と、その日の担当課長の《契約発表》の掛け声があり、契約発表の前かあとに店長と営業部長のミーテングがありましたが、どっちが先だったか、あとだったかは忘れてしまいました。

そして、最後に、課長が《では、今日も一日宜しくお願いします》といったあと、全員で《お願いします!!》大声で気合を入れます。かくして、不動産仲介会社の一日が始まるのでございます。
 

弊社では、国分寺市、小平市、東大和市の土地、一戸建て、中古マンションの全情報を毎日取得し、案内図付の図面に加工してファイリングしています。そして、不動産情報誌にまとめ、月に一度、登録しているお客様に送付しています。

詳しくは、購入不動産情報誌「マイホーム応援団」のページをご覧下さい。

 不動産コラム2.のトップへ

 不動産コラム3. 現地売り出し